社会福祉法人の会計

2016年04月05日  |   webセミナー  

こんにちは。今日は「社会福祉法人の会計」というテーマでお話をしていきたいと思います。

社会福祉法人の会計というのは従来かなり色々な基準が煩雑な状況で存在していましたが、やはり、基準が統一していない、準拠しなければならない基準がありすぎるということになってくると、決算書を作られる方や決算書を見られる方からしても非常に煩雑で理解しづらいという要請がありましたので、社会福祉法人会計基準に一本化されることになりました。この基準は平成27年4月から始まる事業年度からはすべての社会福祉法人において適用することとされています。

それでは、この一本化された社会福祉法人会計基準についてお話をしていきたいと思います。この基準で決められている財務諸表の体系というのがこちらのスライドに書いてあります。「財務諸表等」と表現しますけれども、「財務諸表」そのものは、「資金収支計算書」、「事業活動計算書」、「貸借対照表」の3つです。「等」の中に含まれているものが、「附属明細書」と「財産目録」という形になります。

【参考:財務諸表等】
1.資金収支計算書・・・会計年度におけるすべての支払資金の増減の状況を表示するもの
2.事業活動計算書・・・会計年度における純資産のすべての増減内容を表示するもの
3.貸借対照表・・・会計年度末現在におけるすべての資産、負債及び純資産の状態を表示するもの
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4.附属明細書・・・会計年度における資金収支計算書、事業活動計算書及び貸借対照表に係る事項を表示するもの
5.財産目録・・・会計年度末現在におけるすべての資産及び負債につき、その名称、数量、金額等を詳細に表示するもの

このイメージを持っていただくために、財務諸表の3つの資料の関係を確認します。真ん中に貸借対照表と書いてありますが、これは企業会計におけるB/Sと同じものです。こちら事業活動計算書と書いてありますが、これは企業会計のP/L(損益計算書)に近いものです。これらの関係ですが、事業活動計算書に記載の「当期活動増減差額」の金額と、貸借対照表の「純資産の増減額」が一致するようになっています。企業会計で言うと、利益の額と純資産の増減額が一致することと同じです(例外を除きます)。
また、資金収支計算書と貸借対照表の関係ですけれども、資金収支計算書は企業会計で言うところのキャッシュフロー計算書に近い性質を持っているものです。ここで計算された「当期収支差額」と貸借対照表の「支払資金の増減額」が一致するということになっています。ここで、支払資金とは、流動資産から流動負債を差し引いた残額のことを言います。ただし、1年基準に基づく固定から流動への振替及び棚卸資産(貯蔵品を除く)は支払資金の範囲から除くということになっています。企業会計から言うと少しわかりづらいところですので、ここは注意が必要なところなのかと思います。

次に、財務諸表の区分方法ですが、財務諸表はいくつかの区分に分けて表示しなければなりません。明細を作っていくようなイメージですが、社会福祉法人全体の下に、「事業区分」というものがあります。「社会福祉事業」と「公益事業」と「収益事業」です。また、これらの事業区分についてそれぞれ「拠点別」に分けなさいとされています。例えば、東京都にある拠点、千葉県にある拠点など、各々の拠点を分けて表示をしなさいということになっています。さらに、その拠点の中でいくつかのサービスをやっている場合、それらを「サービス区分」として分けて表示しなさい、ということになっています。ですので、企業会計における貸借対照表、損益計算書などの本表というよりは、社会福祉法人ではより細かく「事業区分別」「拠点区分別」「サービス区分別」というように分けた財務諸表を作成しなければならない、ということになっています。

【参考:財務諸表の区分方法と区分する理由】
1.事業区分・・・社会福祉事業、公益事業、収益事業
2.拠点区分・・・原則として予算管理の単位
3.サービス区分・・・法令等の要請により会計を区分して把握すべきもの、法人の定款に定める事業ごと
区分する理由:社会福祉法人が行う事業は運営費や措置費などの公的な資金が法人に対して支払われるため、その資金使途を事業別・拠点別・サービス別に把握できるようにするため(事業活動状況の透明化の要請)

それに加えて、「財務諸表の注記」ということでこちらにいくつか記載してありますが、気をつけなければならないのは、「継続企業の前提に関する注記」が入っていることです。これはいわゆるゴーイングコンサーンというものですが、要するに法人がこれからしばらくの間継続しそうもない、簡単に言ってしまうと潰れる可能性が高い場合には、注記しなければならないというものです。これは企業会計でもある注記ですが、この注記が付いてしまうと、直ちに法人が潰れるということではないのですが、外から見ているとかなり心配になってきます。常に注意をしなければならないということになります。ただ、継続企業に関する注記があるからと言って注意するというよりも、当然法人を潰すという訳にはいきませんから、きっちりと資金調達も含めて準備をしておけばあまり心配することはありません。常に経営のことを考えて、しかも外部からどんな風に見られるかということも考えて経営をしていかないと、思わぬところでこういった注記が付いてしまって、外部からご覧になられている方が心配になってしまうと言うことがあり得ます。これは企業会計では当然ですけれども、他の法人の会計ではあまり出てくる論点ではないので、ぜひ注意をしておいていただきたいと思います。
また、「関連当事者との取引」というものがあります。これは関係会社やあるいは理事とか関係する役員の方々が代表しているような会社との取引というのは、どんな取引があるのかということを注記しなさい、公表しなさいということになっています。これはどういうことかと言うと、社会福祉法人を利用してファミリービジネスを儲けさせようとかそういうことがないように、外から見ても明朗会計にしなさいということが要請されている訳です。ですので、常にその注記の対象となる関係者との取引というのは把握しておかなければならないということになります。それだけこの基準が社会福祉法人に対してあまり不正とかがないように、あるいは、関係者との取引はあってもいいのですが、第三者に対してきっちりと報告をして、別に悪いことをやっている訳ではありませんということを正々堂々と公表するということを求めています。ですから、社会福祉法人の透明性ですね、何となく社会福祉法人って悪いことをやっているのではないかと世間一般に思われていることも確かにあって、それを払拭するためにクリーンさというか、きちんとやっていますということをちゃんと開示しなさいということをこの基準では求めてきています。

【参考:財務諸表の注記項目】
1.継続事業の前提に関する注記
2.重要な会計方針
3.重要な会計方針の変更
4.法人で採用する退職給付制度
5.法人が作成する財務諸表等と拠点区分、サービス区分
6.基本財産の増減の内容及び金額
7.第3章第4(4)及び(6)の規定による基本金又は国庫補助金等特別積立金の取崩し
8.担保に供している資産
9.固定資産の取得価額、減価償却累計額及び当期末残高(直接控除の場合)
10.債権額、徴収不能引当金の当期末残高及び当該債権の当期末残高(直接控除の場合)
11.満期保有目的の債券の内訳並びに帳簿価額、時価及び評価損益
12.関連当事者との取引の内容
13.重要な偶発債務
14.重要な後発事象
15.その他社会福祉法人の資金収支及び純資産増減の状況並びに資産、負債及び純資産の状態を明らかにするために必要な事項

財務諸表の体系というのは少し複雑なんですけれども、まとめるとこのスライドの形になります。どのパターンに当てはまるとどの財務諸表を作らなくていいとか、これは必ず作らなくてはいけないとか、というような決まりがありますので、事前にきちんと確認をして必要な財務諸表を漏れなく作るということをしていただければと思います。

個別の論点というのもいくつかあります。固定資産の減損会計もありますし、税効果会計も法人税法上の収益事業をやっていて法人税等を支払う必要があれば適用があります。このように、これまでなかったような企業会計に近い処理がたくさんありますので、ぜひ注意をしておいていただければと思います。この企業会計に近い基準というのは、何も皆様に過大な負担を与えようと考えているのではなくて、普通にやりましょうよ、ということなのだと思っていただきたいと思います。企業会計の場合は株主からお金を集めていますから、株主に対して預かったお金をこういう形でちゃんと運用していますということをアピールする必要があります。社会福祉法人は本来の目的である社会福祉事業に対してどんな活動をやっていて、財政状態がどういう風になっているのかと、いくら良い活動をしていても資金が持たなければ法人というのは続きませんから、そう言ったところをきちんと開示していこうということです。

今回は以上です。