8.財務諸表監査と粉飾決算の問題

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 きょう、このあとは財務諸表監査のほうを中心にお話をしていきます。粉飾決算の問題なのですけれども、いろいろあるのです。監査で粉飾決算を見抜こうか見抜くまいかという議論がされています。皆さんご存じですか? 不正を発見するための監査基準というのは、今、金融庁が大至急作っているのです。それに対して公認会計士協会は大反対をしているのです。この間、公認会計士協会で、担当の金融庁の課長を招いて、彼に説明をさせたのです。会計士は全国に一斉中継をして5300人も来たそうです。暇なのですね。私も行ってしまいましたので、私も暇のうちの1人でしたけれども。この内容は私のブログに書いてあります。あとでそのブログのURLをお伝えします。どういうことかというと、結論から言うと、金融庁の言っていることは正しいのです。間違いなく金融庁の言っていることのほうが正しいです。ただし、彼らのよくないところは、紙に書いていないです。紙に書いていないエクスキューズをたくさんするのです。紙に書いていないエクスキューズが全部紙に書いてあって、会計士側に明記されていれば、金融庁の言っていることのほうが正しいです。この不正に関する会計基準が導入されて、何か変わるのかというと、多分何も変わりません。皆さんにとって、大きな変化は起きないと思います。なぜかというと、そもそも公認会計士の監査で不正など見つかるわけがないのです。すごく運が良くて、すごく気のきく会計士が見つけることはあります。ですが、制度的にこれで完璧に不正を見つけさせてようと思ってもできないのです。なぜならば、示唆ですから。テストベースでしか監査をやってないのです。内部統制を前提とします。テストでしかエビデンスを見ていないです。売り上げに関しても、売り上げ1件、1件全部見ていますか?

 店舗系の売り上げでしたらレシートを全部見て、その入金額が毎日合っているか全部チェックしていますか? できるわけないです。していないのです。していない、できるわけがないからこそ、では、そのレジの入金のチェックは誰がどのようにやっているのか。誰がどの責任でやっているのか。店舗ごとに。それを、エリアマネージャーか誰かがまとめて本部に回って来て、その入金のチェックって誰がどこでやっているのか。これを見るのが内部統制なわけです。これだったら大きなミスはないでしょう。だから、サンプルベースで監査をやっているわけです。監査法人が100倍払っても、サンプルベース社が変わったら管理できないわけです。それならば店舗に1人ずつ会計士置いておかないといけないです。レジのところにずっと。300店舗あるとしたら300人の会計士が、24時間営業だったら、3交代ぐらいしなければいけないのではないですか? 皆さんの会社の監査法人は今2000万円ぐらいだったら、多分20億円ぐらいになってしまうのです。できるわけがないです。だから、基本変わりません。これは何を求めているかというと、あの不正の監査基準はなぜそんなものを今出さなければいけないかということですが、金融庁の問題で、オリンパスと大王製紙の問題があって、金融庁は海外の証券取引委員会や市場からボロクソにたたかれているのです。「ふざけるな、お前ら。あんなことやっておいて、何のエクスキューズもなくて、金なんか出せるか、こら」って、下品な言い方をすると、そのように攻め込まれているわけです。だから、うちはこういう対策を打ったということをどうしても出さなければいけない。なので、新しい監査基準を作らないと、彼らがエクスキューズできないのです。言い訳ができないわけです。だから、ふらなければいけないというふうに言っていました。

 だから、そこは、さすがに明文化はされないと思いますけれども。要するに、そういうエクスキューズのために会計監査でできる範囲で不正の発端を見つけた場合には、きちんとレポートしなさいというのが不正の監査基準なので、会計士がこれから不正を1から10まで見つけるような監査にはなり得ないです。絶対に無理です。ただし、あのやり取りを聞いていてすごく思ったのですが、本当に会計士の人たちというのは、いい言い方をするとめちゃくちゃ真面目だな、悪い言い方をすると本当バカだなと思ったのです。なぜかというと、文章に書いていないことを、想像するのです。文章に書いていないことを想像して、この書き方だったら、こうやってやらなければいけないと決まっていると言うのです。自分たちの責任範囲を大きく捉える傾向にあるのです。だから、先ほどの内部統制の話にしてみても、本来は、決算の財務報告に関するところだけしかやらなくていいと決まっているのに、内部統制と言われるものだから、張り切ってしまうのです。今回も不正の監査、不正の監査基準をやることというのは、明記されているのに、それでは絶対足りない、足りるわけないと。ほかにもたくさん見るところがあるでしょう。だから、このようなことができるわけがないと言うのです。金融庁の課長に対して、公認会計士協会の会長と副会長が言っているのは、間違いないです。一番真面目な人たちがなっているわけですから。そういうメンタリティであるということを、同時に皆さんは理解をしていただきたいと思います。