9.実際にはどのようにして監査をしていくのか。「監査は試査」

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 では、それに対して、どうやって対応していくのかということが、これからのテーマになっていることです。ただ、監査は試査なのです。試査ということは、きょうなんとなく覚えていただきたいと思います。全部見ているわけではない。テストベースで、サンプルで、チェックをしているということです。大体そうですね。内部統制だって、そうですね。25件じゃないですか。内部統制のテストというのは。あれは統計的なデータに一応基づいているのですけれども、25件なのです。あくまでも試査で行われているということです。

 では、粉飾決算があったときの、監査人のペナルティーということで、ここに書いてある通り、いろいろあるのですけれども。結局、ここにもあるのですが、オリンパスのときは、責任は問われていないです。誰かが首になったとか、業務停止になったとか、そういうことではないです。カネボウのときはいろいろありました。遠因としては、結局私がかつていたみすず監査法人というのはつぶれました。時と場合によって違うのです。いろいろな事件があるのですが、そのときの状況によって変わってくるということです。なので、下手すると監査法人はつぶれるかもしれないなという前例ができていますから、それは間違いなく過去の事実としてできているので、監査法人はつぶれたくないのです。当たり前なのですが。これを回避するために一生懸命努力をする。結果的に文句を言われないようなマニュアル的な監査が、今、進行し続けているというのが実態だと思います。ここは、タイトルだけでいくと、粉飾決算の都度監査は厳しくなります。なぜならば、自分のところで出た粉飾決算の事例、これによって、さっき申し上げた不正に関する監査基準が新たにきっと出てきます。何も変わらないと私が申し上げましたけれども、何にも変わらないはずなのですが、真面目な会計士の先生は、それを見て、これもやらなきゃいけない、あれもやらなきゃいけないということで、自分たちのやる仕事を増やしていきます。なので、実態的には皆さんに対して負担はきっと増えてくるのではないかなと思います。粉飾決算の都度、監査は厳しくなっていくというふうに思っていただいていいと思います。ただ、最近の大きな粉飾がいくつか出ていますので、この先監査は厳しくなる、そういう前提にあるのかなという気がしています。

 ここもご参考までに、今、多分ほとんどないと思いますけれども、四半期レビューと定常の監査は明確に違いますし、四半期レビューが導入される前に中間決算と四半期の決算は明確に違います。四半期レビューというのは、決算自体はそんなに変わるものではありませんけれども、四半期のレビューというのは、監査人からすると透明度は低いのです。保障度合いが低いです。簡単に言ってしまえば、分析して大体合っていればOKなのです。さすがにはしょり過ぎていますけれども、大体そうなのです。年度内決算の場合はそうではなくて、きちんと残高を押さえなくてはならないことになっているのです。皆さんがレビューと監査を、あまり厳格に使い分けていらっしゃらない場合に、四半期ってこんな監査で大丈夫なのかと、もし思われているとしたら、多分そちらが正しいのです。四半期の監査と年度の監査があまり変わらないなと思われている方がもしいらっしゃるとすれば、四半期でもレビューやり過ぎなのです。結果的に多大な工数、本来は四半期でそこまで見なくてもいいのではないかと思われるケースがたまにあります。だいぶなくなってきました。こなれてきました。四半期のレビューが導入された直後は、真面目な監査人ほど、かつてのやり方を忘れられなくて、一生懸命やっていたのです。でもそれはルールでそこまでやらなくていいと決まったわけですから、トゥーマッチになっている可能性があるということだけ、一応お伝えしておきたいと思います。